第33回例会




新潟オルガン研究会第33回例会
オープニング/
賛美歌第2編より230番「わが主を十字架の」
  合唱:新潟福音教会聖歌隊

第1部 バッハとその周辺
J.S. Bach and other composers related to him
G.フレスコバルディ/
 トッカータ第3番(聖体奉挙のための)
  オルガン独奏:海津 淳
J.S.バッハ/
 『マグダレーナ小曲集』より
 「御身がともにあるならば」BWV508
  カンタータ第1番
  「輝く暁の明星のいと美わしきかな」BWV1より
 「満たしたまえ、御身ら天なる神のみもとより出ずる炎よ」
  ソプラノ:西門優子
  リコーダー:皆川 要
  オルガン: 笠原恒則
J.S.バッハ/
 『オルガン小曲集』より
  「最愛なるイエスよ、我らここにあり」BWV634
 パストラーレ 第1楽章BWV590
  オルガン独奏:洞口純子
F.メンデルスゾーン/
  後奏曲
  オルガン独奏:渡辺まゆみ

第2部 オルガンとアンサンブル Organ and Ensemble
J.パッヘルベル/
 「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」
J.S.バッハ/
 『17のコラール』より
  「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」BWV659
  オルガン独奏:市川純子,合唱:新潟福音教会聖歌隊
M.ロック/
 組曲 第3番
 リコーダー:皆川 要,八百板正己,大作 綾,林 豊彦
F.クープラン/
 パストラーレ
J.S.バッハ/
 G線上のアリア
H.C.ワーク/
 大きな古時計
 オカリナ:五十嵐正子,オルガン:市川純子
H.シュレーダー/
 『オルガン・通常文』より 第4番アニュス・デイ(平和の賛歌)
 オルガン独奏:大作 綾


日 時:平成15年1月19日(日)午後2時開演
場 所:新潟福音教会(新潟市高美町1-15)
Tel: 025-280-0722, Fax: 025-280-0723
参加費:1,000円
主 催:新潟オルガン研究会
連絡先:パトス音楽村 Tel: 025-263-3577

【曲目解説】

G.フレスコバルディ(Girolamo Frescobaldi, 1583-1643)
トッカータ第3番(聖体奉挙のための)
 ローマ,サン・ピエトロ大聖堂オルガニスト,フレスコバルディがイタリア初期バロックを代表する音楽家であったことは言をまたない.この作品の不協和音,終止回避の連続,半音階と即興的パッセージが創り出す重力から解放されたかのような驚くべき幻想性は,彼の音楽のみならず,コルトーナ,ベルニーニらの美術にも見いだすことのできる,ひとつのバロック的気質の表出と言えよう.教皇庁を有するこの都市は同時にまた揺るぎなき芸術の都であった.(海津 淳)

J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)
『マグダレーナ小曲集II』より
 御身がともにあるならば BWV508
カンタータ第1番《輝く暁の明星のいと美わしきかな》BWV1より
 「満たしたまえ,おん身ら天なる神のみもとより出ずる炎よ」
 バッハが2度目の妻に贈った曲集が「アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」である.1725年から書き始められた2册目の音楽帳には鍵盤曲の他に声楽曲も収められ,アンナや子供達の曲,他の作曲家の曲なども含まれている.BWV508はG.H.シュテルツェルの作.  バッハの教会カンタータ《輝く暁の明星のいと美わしきかな》は1725年3月25日「受胎告知の祝日」に初演された.第3曲目のソプラノのアリア「満たしたまえ,おん身ら天なる神のみもとより出ずる炎よ」は自由なダ・カーポ形式にのって「心の憧れ」と「信仰」を歌う.オーボエ・ダ・カッチャのオブリガート・パートは,本日はリコーダーで演奏される.(西門優子)

J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)
『オルガン小曲集』より「最愛なるイエスよ,我らここにあり」BWV634
パストラーレヘ長調より 第1楽章 BWV590
 「オルガン小曲集」はオルガニストの演奏技法習得のために書かれた教本といわれている.また礼拝に必要な,教会暦に沿ったコラール曲集でもある.この曲は「ここに集い,あなたの御言に耳を傾けます」という内容のコラールである.地味な感じがするが,装飾音がやさしさを引きだしている.全体にしっとりして落ち着いたコラール.  パストラーレはヴァイマル時代の作曲といわれ,4つの楽章から成る.幼子イエスの栄光を称え,誕生の喜びを表した暖かい作品.その特徴がいちばんよく表れているのが,足鍵盤を使う第1楽章である.(市川純子)

F.メンデルスゾーン(Ferix Mendelssohn-Bartholdy, 1809-1847)
後奏曲
 作曲もピアノも天才的だったメンデルスゾーンは,オルガンにも抜群の才能を発揮した.1829年からの英国公演の際に見せた彼のペダルさばきは,その後の英国のオルガン史を塗り替えたと言われるほど.彼の主なオルガン曲には,3つの前奏曲とフーガop.37と6つのオルガン・ソナタop.65があるが,この「後奏曲」はそれらより前の1831年に作られた.前半部分はオルガン・ソナタ第2番の2楽章に影響を与えており,後半はフーガ形式である.ドイツの結婚式でこの曲が奏されていたと聞いたことがあるが,そのような場にふさわしい華やかな印象の曲.(渡辺まゆみ)

J.パッヘルベル(Johann Pachelbel, 1653-1706)
「いざ来ませ,異邦人の救い主よ」
J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)
『17のコラール』より「いざ来ませ,異邦人の救い主よ」BWV659
 今回は同じコラールに基づく二人の作曲家の曲を演奏する.パッヘルベルはコラールを手鍵盤とペダルにそのままの形で用いているが,バッハは手鍵盤を用いて,コラールの旋律をヴェールで覆って見え隠れするかのように作曲している.そのような微妙な表現は,神の御子の不可思議な「神秘」を表しているともいわれている.アドヴェント(待降節)のコラールであるが,聖歌隊が歌った歌詞からも分かるように,教会暦に関係なく演奏できると思う.作詞はマルティン・ルター.(市川純子)

M.ロック(Matthew Locke, 1630-1677)
組曲3番 へ長調Fantasie ミ Courante ミ Ayre - Sarabande
 今回は,オルガニストを交えてのリコーダー四重奏である.全く違って見えるオルガンとリコーダーであるが,発音機構が同じこともあって親戚のような関係にある.いくつものメロディーを同時に操るオルガニストにとって,表現手段が同じリコーダーによるアンサンブルは,表現力を研くためのよい練習になる.演奏する曲は,パーセルにも多大な影響を与えたイギリスの大音楽家,M.ロックのコンソート組曲.ロックは当時最新流行の「バロック音楽」を積極的に取り入れる一方,古いスタイルのコンソート音楽も数多く手がけた.(皆川 要)

F.クープラン(Francois Couperin, 1668-1733)
「パストラーレ」
J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)
「G線上のアリア」
H.C.ワークス(Henry Clay Work, 1832-1884)
「大きな古時計」
 「パストラーレ」はもとはリコーダーの曲であるが,オカリナにもよく合う.短いが,素朴でなんとなく可愛らしい曲.  「G線上のアリア」はバッハの管弦楽組曲第3番BWV1068の2曲目の「エール」が原曲.静かで気品ある美しいメロディーはとても有名である.「G線上」という名は,1871年にウィルヘルミ(1845-1908)がヴァイオリンのG線一本だけ弾ける独奏曲に編曲したときに付けられた.  昨年大ヒットした「大きな古時計」は,アメリカの作曲家H.C.ワークにより1874年にイギリスで作曲された(1876年出版).日本にやって来たのは1962年.「ブルーグラス」というカントリーミュージックでも,バンジョー,マンドリン,ギターなどでよく演奏されるという.オカリナとオルガンではどう響くだろうか?(市川純子)

H.シュレーダー(Hermann Schroeder, 1904-1984)
『オルガン・通常文』より 第4番アニュス・デイ(平和の賛歌)
 20世紀ドイツのカトリック音楽における,最も重要な作曲家.1904.3.26ベルンカステルで生まれる.1926-30ケルン音楽学校にて,教会・学校音楽について学び,その後,同校にて教鞭を執る.以降,現代オルガン音楽の作曲家・教会音楽の理論家として,2つの分野で活躍.戦後,ケルン音楽学校の教授となり,1981まで後進の指導に当たった.シュレーダーはグレゴリオ聖歌をオルガン音楽として編曲し,芸術的価値を深めたことでも知られている.今回演奏する「Agnus Dei」もグレゴリオ聖歌によるもの.絶えずどこかの声部にグレゴリオ聖歌のテーマが現れる.最後は装飾の施されたテーマがペダルでも奏でられ,終結へと向かう.(大作 綾)