第34回例会




新潟オルガン研究会第34回例会
オルガン・レクチャーコンサート Organ Lecture Concert

パイプオルガンの豊かな響きの秘密
講師 林 豊彦(新潟大学工学部 教授)
パイプオルガンは人類史上初の“サウンドシンセサイザー”.それを数多くの笛だけで作りあげているところがすばらしい!その秘密が“レジストレーション”.その音づくりのメカニズムをさぐる


演奏曲目 Organ Music Performed
J.S.バッハ:
 『最愛のイエス我らここに集いて』BWV731
 『主イエスキリストわれを顧みたまえ』BWV709
A.ヴィヴァルディ作曲・J.S.バッハ編曲:協奏曲 イ短調 BWV593
F.C.deアラウホ:ティエント第5番
G.フレスコバルディ:トッカータ第7番(トッカータ集第1巻より)
D.ブクステフーデ:前奏曲とフーガ ト短調 BuxWV149
L.ボエルマン:ゴシック組曲 より
M.レーガー:幻想曲とフーガ ニ短調 Op.135bより

オルガニストOrganists
斎藤純子,酒井 仁,海津 淳,八百板正己
市川純子,渡辺まゆみ,大作 綾


日 時:平成15年6月1日(日)午後2時開演
場 所:日本キリスト教団東新潟教会
参加費:800円
主 催:新潟オルガン研究会
後 援:日本キリスト教団東新潟教会
連絡先:市川純子 025-260-5835


【曲目解説】

J.S.バッハ(J.S. Bach, 1685-1750)
「最愛のイエス我らここに集いて」 BWV731
この作品は,バッハのごく初期のアルシュタット時代に作られたものと思われる.『うちなる思いと熱き願いを天つみ国の教えに注がしめ,我らの心を汝のみもとに向かわしめたまえ』という歌詞で,装飾が美しいコラールである.
「主イエスキリストわれを顧みたまえ」 BWV709
バッハの弟子,キルンベルガーが筆写した通称「キルンベルガー・コラール集」の作品.ソプラノの旋律が豊かな装飾音で彩られている.(斎藤純子)

J.S.バッハ(J.S. Bach, 1685-1750)
協奏曲 イ短調 BWV593
バッハはワイマール時代,当時の宮廷楽団でよく演奏されていた,ヴィヴァルディをはじめとする音楽先進国イタリアの協奏曲にふれ,これをオルガンやチェンバロのために多数編曲している.この曲はヴィヴァルディの有名な合奏協奏曲集「調和の霊感」作品3の第8番をオルガン独奏用に編曲したもの.バッハの編曲は原曲にほぼ忠実であるが,随所で音型を変えたり,原曲にはないペダルパートを書き加えるなどして,弦楽合奏とはまた異なる,オルガン曲としての魅力を持つものに書き改めている.おなじみの急−緩−急の3楽章形式.ヴィヴァルディの甘く美しい旋律と形式をバッハがみごとに自らのものとした佳曲.(酒井 仁)

F.コレア・デ・アラウホ(Fransisco Correa de Arauxo, 1576-77頃-1654)
ティエント第5番
スペイン・バロックを代表するオルガニスト,理論家,コレア・デ・アラウホ.彼の作品はすべて1626年の《オルガン技法,オルガンの実践的ティエント・ディスクルソ集とその理論》に収められている.<ティエント>はリチェルカーレあるいはトッカータに対応するイベリア半島独自の器楽様式であるが,この作品の厳格な対位法とソロ声部の華麗なアラベスクによるコントラストは,この国の多様性,とりわけ色濃く残されたイスラム文化の記憶を想わさずにはおかない.(海津 淳)

G.フレスコバルディ(Girolamo Frescobaldi, 1583-1643)
トッカータ第7番(トッカータ集第1巻より)
この曲のような古い時代の鍵盤音楽には,オルガンならでは,またはチェンバロならではの表現を追求した曲がもちろん多かったが,オルガンで弾いてもチェンバロで弾いても美しく響くように意図されたものも多かった.とは言っても,原理の全く異なる2種の楽器で同じ弾き方をして良いはずはなく,注意して聴かなければ別の曲かと思うくらい,各々の楽器の特性に応じて弾き分けないと,どっちつかずの演奏になってしまう可能性がある.その意味では演奏が難しい曲である.職業柄いつもはチェンバロで演奏するフレスコバルディのトッカータを,今日はオルガンで挑戦する.(八百板正己)

D.ブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637-1707)
前奏曲とフーガ ト短調 BuxWV149
D.ブクステフーデはデンマーク出身の北ドイツの作曲家.1688年からリューべックにある聖マリア教会のオルガ二ストとなった.バッハが360キロの道のりを徒歩で彼の演奏を聴きに行った話しは有名である.この前奏曲とフーガは2部形式ではなく4部に分かれている.速いパッセージのトッカータ,声楽的な第1フーガ,瞑想的なレチタティーボ,荘重的な第2フーガと即興的なパッセージから成る.多彩な音色を持ちいかにも北ドイツバロックオルガンを感じさせる曲である.(市川純子)

L.ボエルマン(Leon Boellmann, 1862-1897)
ゴシック組曲:氈D序奏/コラール,.ゴシック調メヌエット,。.聖母への祈り,「.トッカータ
L.ボエルマンはフランスのオルガニスト,作曲家.E.ジグーにオルガンを学ぶ.19世紀のフランスのオルガンは,カヴァイエ=コルによって,よりオーケストラの音響に近いものに改良された.このゴシック組曲は彼の最も有名な曲で,フランスロマン様式の本質を要約しており,かつフランス近代のオルガン音楽の特徴もよく表している.各楽章の特徴は,氈D重厚な交唱的効果の序奏;.軽く勢いのあるメヌエット;。.静かで信仰心に満ちた祈り;「.絶え間なく動き,最後に大きな盛り上がりを見せるトッカータである.(渡辺まゆみ)

M.レーガー(Max Reger, 1873-1916)
ファンタジーとフーガOp.135bより ファンタジー
M.レーガーはドイツのヴァイデンにて生まれ育つ.1890年からF.リーマンに師事して作曲家となる.後に音楽学校の教師となるが,晩年には作曲に専心した.彼の音楽の源はブラームス,リストに発するが,形式的にはバロックの流れを汲む.南ドイツの荒っぽさや,古風で繊細な対比性が現れる彼の曲は一般に難曲とされており,その価値が世に認められたのは,名演奏家K.ストラウベの力によるところが大きい.今回演奏するOp.135bは1915年の曲で,最後の偉大な作品である.下降するLeggieroの急流で始まり,旋律的なAdagio部分とQuasi Vivace部分が,計算された交互奏を見せる.曲の終わりでは,冒頭部分がペダルに音価を4倍にして出現する.(大作 綾)