新潟オルガン研究会 第38回例会



ヴァイオリニスト 岡 礼子さんを迎えて

【プログラム】

第1部 ポジティヴ・オルガンの楽しみ
W.バード/ドレミファソラ
オルガンソロ:八百板正己

D.ツィポリ/4つの小品とカンツォーナ(Fa)
オルガンソロ:大作 綾

J.S.バッハ/クラヴィーア練習曲集第三巻より
主よあわれみたまえ Bwv672 キリストよあわれみたまえ Bwv673 主よあわれみたまえ Bwv674
オルガンソロ:市川純子

           ー 休 憩 ー

第2部 ヴァイオリンとオルガンの協演
H.I.F.v.ビーバー/「ロザリオのソナタ」より 第1番「お告げ」

J.S.バッハ
カンタータ第147番《心と口と行いと生きざまもて》より
第5曲「備えたまえ、イエスよ、今もなお汝の道すじを」

カンタータ第171番《神よ汝の誉ればその御名のごとく》より
第4曲「イエスこそ、わが呼びまつる」

G.F.ヘンデル/ソナタ イ長調 作品1-3

G.フォーレ/サルヴェ・レジーナ アヴェ・マリア

O.レスピーギ/アリア

ヴァイオリン:岡 礼子 ソプラノ:西門優子
ヴィオラ・ダ・ガンバ:白澤 亨
オルガン:笠原恒則、渡辺まゆみ

司会進行:林 豊彦

日 時:2004年10月30日(土) 19:00開演
会 場:りゅーとぴあスタジオA
参加費:一般1,300円(当日200円増)学生1,000円
主 催:新潟オルガン研究会
チラシはこちらです。

【曲目解説】
第1部

W.バード(1543−1623)
ドレミファソラ
イギリス・ルネサンス期の天才バードによる鍵盤音楽。長い音符で奏でる「ドレミファソララソファミレド」の六音音階(ヘクサコード)の周りに、細かい旋律がいくつも絡みながら進む。音階はさまざまな高さで歌われ、絡みつく細かい旋律も実にバラエティに富んでいる。堅固に構成された作品ながら、朗らかな歌心で固さを感じさせないのはさすが天才バードである。この種の音楽を楽しく聴くコツは長い音符を意識することで、それにより音楽が立体的に聞こえてくる。(八百板正己)
D.ツィポリ(1688〜1726)
4つの小品とカンツォーナ(Fa)
1688年プラトに生まれ、1726年コルドバにて没。(享年38歳)B.パスクィーニの最後の弟子と言われており、サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ教会やジェズイット教会のオルガニストとなる。その後イエズス会士として南米を歴訪。最終的にはコルドバにて音楽活動を行う。本日は『Sonate d’Intavolatura』の曲集から同調の作品を演奏する。(演奏順についての記載は特に無し)(大作 綾)
J.S.バッハ(1685-1750)
クラヴィーア練習曲集第三巻より
主よあわれみたまえ Bwv672/キリストよあわれみたまえ Bwv673
主よあわれみたまえ Bwv674
キリエとは主のあわれみ願う連祷のことで「あわれみの賛歌」をさす。もとは教皇グレゴリエスI世時代にギリシア語の歌詞のままミサに用いられた。今は各々の言語で各キリスト教会で唱えまた歌われている。このキリエ〜クリステ〜キリエの3曲はフゲッタ形式であるが単純ではなく洗練された美しい曲に仕上がっている。変ホ長調のフーガと同じく第3フゲッタの9/8拍子は第1フゲッタの3/4拍子と第2フゲッタの6/8拍子が融合されたもので父、子、聖霊を表しているとも考えられている。(市川純子)

第2部

ビーバーはボヘミアの卓越したヴァイオリン奏者。「ロザリオのソナタ」はキリストの降誕・受難・復活を全十五曲(+α)で辿る曲集で、本日演奏される第一番は、物語の始まり、天使が聖母マリアに受胎を告げる場面を描いている。ハーディガーディを思わせるドローン上でヴァイオリンが自由に動く冒頭からして、すでに宮廷や教会の規範を逸脱しており、むしろロマたちの音楽の影響が伺える。
対してヘンデルの曲は、バロック期のヴァイオリン・ソナタの王道を行く。同じ曲集のリコーダー・ソナタは、贅肉をすっきりと落とした簡素な組立が素晴らしいが、一方でこちらのヴァイオリン・ソナタは、重音奏法などを利して凝った構成が施され、充実感のある音楽となっている。(笠原恒則)

J.Sバッハのカンタータ創作はミュールハウゼン時代(1707〜08年)に開始され、生涯に200曲に及ぶ教会カンタータを作曲した。カンタータ第147番はワイマール時代(1708〜17年)に書いたカンタータを原曲とする。初演は1723年7月2日ライプツィヒ。「マリアのエリザベト訪問の祝日」礼拝で演奏された。第5曲ソプラノのアリアはバスのレチタチィーヴォ「救いの日に、あこがれをもって主に呼びかけなさい」という言葉を受ける形で独奏ヴァイオリンと共に美しく歌われる。カンタータ第171番は「ピカンダー年巻」の1曲。初演は1729年1月1日、ライプツィヒ。新年用のカンタータ。第4曲ソプラノのアリアは独奏ヴァイオリンを伴い、イエスの御名を讃え、輝かしく新しい年を祝福している。(西門優子)

フォーレの二曲は本来はソプラノ独唱であるが、本日はヴァイオリンで演奏される。パリで教会のオルガニストを歴任したフォーレにとって、ピアノとともにオルガン伴奏の歌曲も自家薬籠中のものであった。両曲とも聖母マリアを讃える伝統的な歌詞をもち、特に後者は、第二部冒頭のビーバーで描かれた受胎告知の場面で、御使いがマリアに語った言葉に由来する。
レスピーギはイタリアの作曲家で、フォーレの弟子であるラヴェルと同世代にあたる。代表作のローマ三部作にみられるように管弦楽法に長けていたが、このアリアもナポリの六など特徴的な響きを巧みに盛り込み、美しい効果を生んでいる。(笠原恒則)