第19回例会



●J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ロ短調 BWV544
演奏:市川純子

●J.S.バッハ:幻想曲ト長調 BWV572
演奏:宇田蕗子

●D.ブクステフーデ:シャコンヌ ホ短調 BuxWV160
         :前奏曲とフーガ ト長調 BuxWV147
演奏:渡辺まゆみ

----休憩----

●O.レスピーギ:アリア
演奏:渡辺まゆみ

●J.S.バッハ:前奏曲とフーガ ヘ短調 BWV534
演奏:本間真弥

曲目解説:渡辺まゆみ


本日の3曲のJ.S.バッハ(1685-1750)の作品を作曲年代順に紹介しよう。
 まず<幻想曲 ト長調 BWV572>は、青年時代の1708年以前の作品と思われるが、ヴァイマル時代(1708-17)説もみられる。3つの部分から成る。手鍵盤のみの単声によるトッカータ風の急速なパッセージの第1部。第2部「グラーヴェ」は重厚で穏やかな中間部で5声部で書かれている。そして再びトッカータ風の急速なパッセージの第3部で曲を締めくくる。
 <前奏曲とフーガ ヘ短調 BWV534>はヴァイマル時代に書かれた。前奏曲はイタリア音楽の様式の2部形式とトッカータ風の烈しい終止とが結びついており、バッハの前奏曲の中でもとりわけ美しいもののひとつである。フーガの減7度の下降跳躍を含むテーマには前奏曲との関連性が認められている。このフーガは単調で欝々としているが、毅然としていてしかも高尚である。
 <前奏曲とフーガ ロ短調 BWV544>は、ライプツィヒ時代(1723-50)の1730年頃の美しい自筆楽譜で伝わった作品で、この時代の円熟した芸術のあらゆる特徴が見られる。前奏曲(8分の6拍子)は協奏曲様式で、長い幻想曲風のリトゥルネロ主題がフーガ風の挿入句と交替する。フーガ(4分の4拍子)は3つの部分から成り、清澄かつ壮麗なフーガ主題だが、第3部では秘められたパッションがにわかに浮上し、徐々に力を強めてクライマックスに導く。
 オルガン音楽では、J.S.バッハ以前の最大の巨匠といわれるディートリヒ・ブクステフーデ(1637頃-1707)は、ドイツの作曲家、オルガン奏者である。オルガニストだった父に学び、1668年にトゥンダーの死去により空席となったリューベックの聖マリア教会のオルガニスト兼ヴェルクマイスター(書記、会計係、管理人などを兼ねた職務)となり、死去するまでのほぼ40年間この地位にとどまった。それまでの慣習だった<夕べの音楽>という名の教会演奏会を飛躍的に発展させ、1705年には若き日のJ.S.バッハもその音楽を聞きに行っている。彼のオルガン作品は自由奔放、大胆かつ豪壮な作風を持つものが多い。
 <シャコンヌ>とはバロック時代の重要な器楽形式であった変奏曲の一種で、3拍子の壮重なリズムを特徴とする。ペダルパートが4小節の旋律定型を反復し、手鍵盤のパートが対位法的変奏をしながら発展していく。ブクステフーデは2曲のシャコンヌを作っているが、このホ短調の曲は透明感があり、静かで非常に美しい。
 続く<前奏曲とフーガ ト長調>は、ペダルソロを持つ自由闊達なファンタジー様式の前奏曲に続いて、フーガが展開される。フィナーレにも華麗なパッセージワークが繰り広げられ、ブクステフーデの豊かな想像力がいかんなく発揮される。
   オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)は、作曲家としては近代イタリアで最も国際的に名を知られた存在である。<ローマの噴水>、<ローマの松>、<ローマの祭り>の交響詩三部作など管弦楽の分野にすぐれた作品を残した。この<アリア>は、オルガンと弦楽器による協奏曲<組曲G>の中の作品で、きわめて叙情的である。

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第20回例会



<音楽の場>でのオルガン
〜教会、サロン、コンサートホール〜

O.ギボンズ
Orland Gibbons (1583‐1625)
プレリュード ト長調 (2)
プレリュード ニ短調 (3)
ファンタジア ニ短調 (8)
プレリュード イ短調 (4)
ファンタジア イ短調 (11)
プレリュード ト長調 (46)
2段オルガンのためのファンタジア ニ長調 (7)
※括弧内の数字は全集(Musica Britannica)における作品番号

オルガン演奏:八百板正己

「<音楽の場>の歴史」
お話:松本彰(新潟大学人文学部教授)

--------休憩--------

G.フレスコバルディ
Girolamo Frescobaldi(1583-1643)
「使徒のミサ」より
エレヴァツィオーネ

F.クープラン
Fran腔is Couperin(1668-1733)
「修道院のためのミサ」より
エレヴァシオン

D.ツィポリ
Domenico Zipoli(1688-1726)
「ソナタ・ディンタヴォラトゥーラ」より
エレヴァツィオーネ

J.S.バッハ
Johann Sebastian Bach(1685-1750)
「クラヴィーア練習曲集」第3部より
クレド

L.ヴィエルヌ
Louis Vierne(1870-1937)
「自由形式による24曲集」より


オルガン演奏:渡辺まゆみ


〜曲目解説〜

 オーランド・ギボンズは、17世紀初頭のイギリスで最も優れた鍵盤楽器奏者でした。その才能は、弱冠21歳で王室礼拝堂のオルガニストに就任したことからもうかがえます。  
現在まで残っているオルガン曲は10曲余と少ないですが、どれも優れた作品です。本日はその中から特徴的な3曲のファンタジア(声部間の模倣を重視した楽曲)を取り上げ、各々にふさわしいプレリュード(前奏曲)を選んで組にして演奏します。最初に単独で演奏するプレリュードは作曲家の死後もとても愛好されたようで、17世紀末の作曲家パーセルの写本の中にも見られます。

解説:八百板正己



 フレスコバルディは初期イタリアバロックを代表する作曲家、また優れたオルガニストであった。1607年ローマのサンタ・マリア教会のオルガニストとなり、オランダで北方鍵盤楽派の技法を学んだ。翌年帰国後、サン・ピエトロ大聖堂のオルガニストに選ばれ生涯この職にとどまった。
《フィオリ・ムジカーリ(音楽の花束)》は〈主日のミサ〉〈使徒のミサ〉〈聖母のミサ〉から成っている。この曲集の序文でフレスコバルディは、記譜されたとおりの平板な演奏をいましめ、当時のマドリガーレの演奏にならってテンポ・ルバートの奏法をすすめている。彼の作品は対位法的な作品の典範として受け継がれ、バッハもこの曲集の写しを持っていた。

 クープラン家は16世紀の終わりごろから19世紀の中ごろにかけて、パリで活躍した優れた音楽家の家系で、代々サン・ジェルヴェ教会のオルガニストを勤めていた。この「大クープラン」フランソアも18才でこの職を継いでいる。また25才でヴェルサイユ王宮礼拝堂のオルガニストにも選ばれ、晩年まで勤めた。
 多くのクラヴサン曲に比べオルガン曲は2曲しか書かなかったが、この2つのミサよりなるオルガン曲集〈教区のためのミサ〉と〈修道院のためのミサ〉は、フランス・オルガン楽派の17世紀における代表的作品となっている。この曲は"*ティエルスをテノールで"とあり、ティエルスというオルガンのレジストレーションが題名になっている。豊かな装飾性、感情の知的抑制などのロココ芸術の特徴が現れている。

*ティエルス: 8'、4'、2 2/3'、1 3/5'を組み合わせたレジストレーション。

 イタリアの作曲家、オルガン奏者だったツィポリは、またイエズス会の修道士としてアルゼンチンで活動した。彼の鍵盤作品は、対位法とイタリア・オルガン音楽の伝統を守りながら、協奏的要素と優美な旋律を融合させた作品として重要である。

 バッハは1739年にこの練習曲集を出版した。その序文において、この曲集が教理問答歌、その他によるいろいろなオルガン前奏曲からできていると述べ、こうした曲の愛好家や専門家のために書いたと記している。内容的にはオルガン曲集であり、ルター派教会におけるミサの順序に一致するように組み立てられているので「ドイツ・オルガン・ミサ」とも呼ばれている。
 この曲はドイツ語クレドに基づくフーガで"*オルガノ・プレーノ"で演奏される。

*オルガノ・プレーノ:〈全力を振るうオルガン〉の意味で、強大な音響効果を得るために、多くのストップを同時に開く時の指定語。

 フランスの盲目のオルガン奏者、作曲家のヴィエルヌは、ヴィドールとフランクに指導を受けた。ヴィドールの後継者としてサン・シュルピス教会のオルガニストに就任、その後は終生、ノートルダム大聖堂のオルガニストを勤めた。
 フランスのオルガン音楽はヴィドール以後、ヴィエルヌをはじめとするシンフォニックオルガンの流れと、トゥルヌミールをはじめとするリタージカル(典礼)オルガンの流れに分かれていった。ヴィエルヌの他のオルガン曲には〈24のファンタジーの作品〉〈三部作〉6つの〈交響曲〉がある。この曲には"Longpont城の礼拝堂の鐘の音"という副題がついており、兄弟のルネ・ヴィエルヌに献呈されている。

解説:渡辺まゆみ


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第21回例会



J.S.バッハ連続演奏会 第1回

フーガ ト短調(小フーガ)BWV578
演奏:神田藍水

ファンタジー ト長調 BWV572
演奏:叶井順子

クラヴィーア練習曲集第3部より 
<4つのデュエット>BWV802-805
演奏:八百板正己

----(休 憩)----

「バッハの足跡を訪ねて 第1回 アイゼナッハ」
お話し:松本 彰 (新潟大学人文学部 教授)

シュープラーコラール集より
 「われはいずこにか逃れゆくべき」BWV646
 「ああ,われらとともに留まりたまえ,主イエスキリストよ」BWV649
 「尊き御神の統べしらすままにまつろい」BWV647
 「目覚めよ,とわれらに呼ばわる物見らの声」BWV645
 演奏:渡辺まゆみ

前奏曲とフーガ ハ長調 BWV545
 演奏:本間真弥


<曲目解説>

林 豊彦(新潟大学工学部福祉人間工学科教授)

 日本ではパイプオルガンといえばバッハというくらい,大バッハ(J.S. Bach, 1685-1750)のオルガン音楽はよく知られている.ニ短調のトッカータの冒頭を知らない人はほとんどいないだろう.ところが,バッハのオルガン曲の中で自筆譜か生前の出版譜が残っている例は数少なく,ほとんどは作曲年代がわからないのである.先のトッカータはその代表例.バッハ信奉者だったケルナー(J.P. Kellner, 1705-1772)の弟子,リンク(J. Ringk, 1717-1778)の筆写譜が最も古い資料.1706年頃作曲されたとされているが,曲の様式からの推察にすぎない.偽作と主張する学者すらいるくらいである.
フーガ ト短調(小フーガ)BWV578 
基本資料:「アンドーレアス・バッハの本」
この楽譜帳は,同じ頃作られた「メラー手稿譜集」とともに大バッハの長兄,クリストフ(J. Christoph Bach, 1671-1721)が18世紀初期に作成したもの.若い頃の大バッハの曲を数多く含んでいる(全体の24%).この長兄,才能ある末弟の作品を大切に記録・保存していたのである.5小節にわたる息の長い主題は,いちど聴いたら忘れられないくらい魅力的.その前半は{G, D, B, A, F#}をキーノートとする歌,後半はその器楽的な展開という知的な構造となっている.

ファンタジー ト長調 BWV572 
基本資料:J.G.ワルターによる筆写譜
ワルター(J.G. Walther, 1684-1748)はオルガニスト,作曲家,理論家で,母親は大バッハの従姉.1708年,ヴァイマールの教会のオルガニストに就任.翌年,24歳のバッハも同市の宮廷オルガニスト兼楽師に就任したことから,2人の親密なつき合いが始まった.両青年オルガニストは互いに競うように腕を磨いたことだろう.この曲の初期稿は,その頃作られたらしい.急緩急の3部形式.両端部では16分音符や32分音符が楽譜上を走り回る.それとは対照的に,中間部は5声の「Gravement(荘重に)」.重厚な和音の連鎖が157小節にも及ぶ.

前奏曲とフーガ ハ長調 BWV545 
基本資料:J.G.ワルターによる筆写譜,J.P. ケルナーによる筆写譜
「 この曲の旧稿BWV545aもワルターによる筆写譜で残されている.作曲年代はヴァイマールか前任地とされているから,20代前半の作品.それをバッハ自身が1730年頃に改訂したらしい.旧稿はラルゴの中間楽章を含み,協奏曲の形をしていた.その中間楽章を削除し,前奏曲の開始部に3小節を追加し(その再現部にも追加),最終稿が生まれた.ペダルの下降音型をもつ印象的な開始部は,最終稿ではじめて現れたのである.フーガ主題はまさに歌であり,ラルゴを削除した訳がよくわかる.

クラヴィーア練習曲集第3部より<4つのデュエット>BWV802-805
基本資料:オリジナル出版譜(1739.10)
1731年,46歳のバッハは<クラヴィーア練習曲集>の出版を開始.8年後の1739年,その第3部が出版された.その構成は,1)プレリュード変ホ長調;2)21のコラール前奏曲;3)4つのデュエット;4)フーガ変ホ長調,という整然としたもの.バッハのオルガン技法が網羅されている.手鍵盤だけの曲も含まれ,売れ行きにも配慮されている.デュエットは<2声のインベンション>を高度にしたもの.4曲の楽想は大きく異なり,円熟しきったバッハの変幻自在な音使いが聴きどころ.チェンバロで演奏されることも多い.

シュープラーコラール集より BWV646,BWV649,BWV647,BWV645
基本資料:オリジナル出版譜(1747-1748.8,バッハ自家用保存版)
60歳を越え,高齢に達した大バッハは,みずからの作曲技法を総決算し,曲集としてまとめ上げる仕事に取り組んでいた.この曲集もその成果のひとつ.バッハ所蔵だったオリジナル出版譜が残されている.6曲すべてが,40歳代に作った教会カンタータのアリアからの編曲(BWV646だけ原曲が現存せず).どの曲も,わかりやすく優雅な旋律線をもち,その響きの中にコラール旋律が浮かび上がるという形式をもつ.カンタータよりも演奏頻度の高いオルガンコラールの形で出版し,後世に残そうと意図したのだろう.そのもくろみはみごとに成功し,現在でもよく演奏されている.


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第22回例会



クリスマスコンサート

プログラム

J.S. バッハ(1685-1750)
パストラーレ ヘ長調 BWV590
オルガン独奏:八百板正己

D. パーセル(1660頃-1717)
2本のアルトリコーダーと通奏低音のためのトリオソナタ ニ短調
リコーダ:阿部れい子、林 豊彦
通奏低音(オルガン):市川純子

G. フレスコバルディ(1583-1643)
トッカータ第2集より
トッカータ第5番
トッカータ第4番(聖体奉挙のためのトッカータ)
オルガン独奏:海津 淳

--------(休 憩)--------

G.F. ヘンデル(1685-1759)
歌劇「セルセ」より オンブラ マイ フ(なつかしい木陰よ)
J.S. バッハ(1685-1750)
カンタータBWV147より コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
G. カッチーニ(1545-1614)
アヴェ マリア
オカリナ:五十嵐正子
オルガン:市川純子

J.S. バッハ(1685-1750)
前奏曲とフーガ ニ短調 BWV539
オルガン独奏:本間真弥

讃美歌
もろびとこぞりて、まきびとひつじを、あらののはてに
G.F. ヘンデル(1685-1759)
オラトリオ「メサイア」より 「いざ喜びさけべシオンの娘」
ソプラノ:西門優子
オルガン:山田淳子

F. メンデルスゾーン(1809-1847)
前奏曲とフーガ ト長調 Op.37
オルガン独奏:市川純子



<曲目解説>

●パストラーレ ヘ長調 BWV590 
J.S. バッハ(1685-1750)
 1710年頃、バッハのヴァイマール時代に作曲されたとされているが詳細は不明(偽作説もある)。ヘ長調の第1楽章が伝統的なパストラーレの曲想をもつ。イエスが生誕した夜の、静かで落ち着いた田園風景を表している。それに、手鍵盤だけで演奏される舞曲的な3つの楽章が続く。(林 豊彦)
●2本のアルトリコーダーと通奏低音のためのトリオソナタ ニ短調
D. パーセル(1660頃-1717)
 ダニエル・パーセルは有名なヘンリー・パーセルの弟。兄の早世後、その後を継いでロンドンで活躍した。この曲は、J.Walshが1968年に出版したソナタ集の中の一曲で、緩急緩急の4楽章からなる教会ソナタ。リコーダーのもつ歌唱性と運動性がうまく生かされており、ときおり現れる3度の平行進行も美しい。(林 豊彦)
トッカータ第2集より
●トッカータ第5番
●トッカータ第4番(聖体奉挙のためのトッカータ)
G. フレスコバルディ(1583-1643)
 ジローラモ・フレスコバルディは1583年フェラーラに生まれ、1608年よりその生涯にわたって、ローマ、サン・ピエトロ大聖堂のオルガニストを勤めた。<トッカータ第2集>は1615年の第1集にひき続き、1627年にローマにて出版。ここでは長い持続音によるペダル声部、「聖体奉挙のためのトッカータ」といったオルガン音楽固有の様式をもつ作品がいくつか収められており、いずれも奔放なパッセージ・半音階・不協和音など、随所にフレスコバルディらしい色彩がちりばめられている。(海津 淳)
歌劇「セルセ」(1737-1738)より 
●オンブラ マイ フ(なつかしい木陰よ)
G.F. ヘンデル(1685-1759)
 第1幕、第1場でペルシャ王セルセが歌うアリア。この曲は器楽曲としても演奏されるようになり、現在ではヘンデルの「Largo」として広く親しまれている。
カンタータ「心と口と行いと生きざまをもて」(BWV147)より
●コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
J.S. バッハ(1685-1750)
 原曲のカンタータはヴァイマール時代に作られた初稿(BWV147a)を1723年に改作したもの。有名なこのコラールは、この改作時に付け加えられた。流麗なオブリガート旋律の中にコラール旋律がくっきりと浮かび上がる。
●アヴェ マリア
G. カッチーニ(1545-1614)
 この曲についていろいろ調べてみましたが、一般にカッチーニの作品とされる中には含まれていないということです。カッチーニは、詩人・作曲家・歌手を兼ねた人で、今でいうシンガーソングライターのはしり。歌曲「アマリッリ(Amarilli)」が有名。(五十嵐正子)
●前奏曲とフーガ ニ短調 BWV539
J.S. バッハ(1685-1750)
 フーガの部分は、有名な<無伴奏バイオリンソナタ第1番ト短調(BWV1001)>の第2楽章の編曲。この楽章はリュート用にも編曲されている(BWV1000)。そのフーガに、手鍵盤だけで演奏される前奏曲が付け加えられた。同時代の写譜すら残されていないため、フーガの編曲と前奏曲との組合せがバッハ自身によるものなのかは不明。(林 豊彦)
オラトリオ「メサイア」より
●「いざ喜びさけべシオンの娘」
G.F. ヘンデル(1685-1759)
 「メサイア」は旧約聖書の予言のなかでキリストの到来が予感される所から始まり、その生涯、苦難、死、復活そして来るべき栄光の再臨、と、キリストの御わざのすべてを讃えるオラトリオである。ヘンデルが上演ごとに楽譜を書きかえ、声部を変更し、曲を加えたりカットしたりしたために、さまざまなヴァージョンがある。この「いざ喜びさけべシオンの娘」も4分の4拍子と8分の12拍子の版がある。今回は8分の12拍子による、明らかに舞曲風の、初期のヴァージョンを採った。(西門優子)
●前奏曲とフーガ ト長調 Op.37
F. メンデルスゾーン(1809-1847)
 この曲は、1837年に作曲された3曲の前奏曲とフーガ(作品37)の第2曲目。同年、メンデルスゾーンはセシルと結婚している。ト長調の前奏曲はパストラーレのような曲想で、ピアノの「無言歌」を思い起こさせる。続くフーガは、伝統的な対位法にソナタ形式的な主題展開を組み込もうとした労作。(林 豊彦)


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